株式会社 チャイルド・スマイル
代表取締役
紀乃 のりこ 様
1999年4月
NECソフト株式会社
(現 NECソリューションイノベータ株式会社) 入社
2006年6月
合同会社私の心地よさ
(現 合同会社wata'coco) 設立
代表社員 就任
2012年3月
株式会社チャイルド・スマイル 設立
代表取締役 就任
会社の理念について
————最初に、「ちいはぐ」様の理念を教えてください。
まずコンセプトとして、「小さな保育園、大きな家族」という言葉を掲げています。
これくらいの規模だったら家族って言えるよね、というくらいの小規模な保育園なので、「みんなで家族のように生活していきましょう」というメッセージを込めました。
保育理念に関しては、
1.人を大切に想う気持ちを、言葉と態度で伝える
2.自らを律し、環境、言動、心の在り方を整える
3.豊かな感性を育み、感じたことに素直になる
という3本柱を立てています。
他の保育園さんは、このような保育理念は「子どもに対して」制定することが多いのですが、うちの場合、まず大人も子どもも目指しましょう、という前提があります。
むしろ子どもの方がお手本だったりはしますね。
例えば1つ目の言葉で伝える、という部分なんかは、子どもの方が「ありがとう」「ごめんなさい」「すきだよ」ということを素直に伝えられますよね。
大人になると何故か言えなくなるのはあるあるだと思います。
特に日本人はあまり愛情表現をする文化はないと思いますので、子どもから学ぶべきことはたくさんあると感じます。
————他の保育園様ではお子さんへ向けた理念が多い中で、大人も子どもも目指そう、というのはどのような思惑があるのでしょうか?
そうですね、私は目に見えないところ、物事をどう認識しているかというところを大事にしているのですが、大人と子どもを見た時に、大人は子どもの方が劣っている存在だと、無意識に感じている部分が少なからずあるんじゃないかなと思うんです。
もちろん子どもは経験も少なくて体も小さくて、できないことも知らないこともたくさんあるので、そこに対しては大人の経験を伝えたり、生活の中でサポートをしたりしなければいけないと思います。
けれど先ほどもお伝えしたように大人が子どもから教わることもたくさんあるので、どっちが優ってる劣ってるということではなく対等な存在なんだよ、ということを示したかったのが理由です。
保育の知識では、「子どもは大人を小さくしたものではない」ですし、動物学的には次に生まれた世代の方が少しずつ進化もしているんです。
現代は社会の変化のスピードも速いので、大人の知識や経験が、子どもが今の生きている社会やこれからの社会では役立たないこともあります。
例えば「お金は銀行に預けなさい(増えるから)」も今ではお金を銀行に預けても利息よりも手数料の方が高いですよね。
なので「子どもなんだから大人の言うことをききなさい」という姿勢を減らして、むしろ「大人なんだから子どもから教わろう」という姿勢を増やしていった方がよいことも多くなってきていると感じています。
あとは私は長女だったので、「お姉ちゃんなんだから〜〜」という言い回しもとても嫌でした。
でもこの仕事をしたり自分も親になったりしてわかりましたが、小さい子に手がかかって上の子に手が回らない時はどうしても出てきてしまいますし、少なからず上の子は下の子を育てるお手伝いをしなきゃいけないというのは仕方が無い部分ではあると思います。
なので、私は2人の子どもの母親として、例えばうちの家庭では、お菓子を食べる順番は生まれた順など、上の子が「先に生まれて良かった」と思ってもらえる工夫をしています。
話が少し逸れてしまいましたが、子どもを「導く」こと、「マネジメントする」こと、「コントロールする」ことはそれぞれ全然違うのですが、大人は無意識下でコントロールしたくなってしまう。
それは自分で気付かないうちに子どもを劣ってる存在だと思っているということだと思うので、その意識を無くしたいという思いで理念をつくりました。
————ありがとうございます。具体的に、理念を浸透させるお取り組みは何をされていらっしゃるのでしょうか?
理念の意識付けには、繰り返しが必要です。
日々のルーティン作業は体に刷り込まれやすいですが、意識の部分は手を動かす作業ではないので薄くなってしまいがちなので、定期的に理念に触れる機会を設けています。
例えば、今は少し頻度を変えたのですが、コロナ前まで事務所が新宿にあったので、毎朝の電車通勤の30分間を利用して月曜日から土曜日まで、リーダー向けにメルマガを書いて発信していました。
内容としては、その日感じたことや、今日書いたことは理念のこういうところに繋がっていますよ、というものですね。
園によっては「紀乃語録」としてファイリングしてくれたりもしていました(笑)。
どうしてもコンセプトなど概念的なことというのは日々の生活と繋がりづらいと思いますし、生活の中の出来事がどう理念と繋がるのかということを気づいたり感じたりしてほしいので、社内のリーダー向けメルマガは、電車通勤をしていた約4年間、ほぼ毎日書いて送りました。
もちろん自分の中で考えて欲しいという思いはあるのですが、自分で発見するためにはまず何か具体的なケースや事例集などを伝えてあげる必要があると思います。
あとは時々、「この事象って理念のどこに繋がってる?」ってクイズしたりなんかもしていますね。
時には、学校のテストみたいに虫食いにして、ここには何の言葉が入るでしょう?という問いも出すのですが、一言一句正しく覚えるということよりも、もっと感覚的なニュアンスで覚えて欲しいと思っています。
たとえば「心の在り方」を「感情」という言葉で覚えていてもOKなのです。
「これってちいはぐっぽいよね」というニュアンスが、10年経ってやっと理解して使えるようになりました。
最初メンバーからは、ちいはぐっぽいって何?どこが?みたいな声もたくさんあったのですが、うちはそもそも理念から保育園を作ったので、「ちいはぐらしさ」という一概に言葉にできない概念の部分を一番大切にしています。
会社の文化について
————理念浸透のお取り組みをされる中で、職員の皆様の考え方や、「ちいはぐらしい」文化の在り方の変化などはございましたか?
そうですね、文化っていう概念的なものの見える化が難しいところではあるんですが、文化醸成ってとても楽しくて。
ルールより文化の方が強いと思っているので、どう文化を醸成していこうか、ということは日々考えて変化しているとは思いますね。
ただこれは理念浸透の取り組み前でしたが、保育理念の文字を見た時に「私がやりたい保育が言葉になってる!」と言ってくれるメンバーもいました。
そこで感銘を受けてくれたメンバーが、ありがたいことに今リーダー(園長)として定着してくれているので、根本の部分は変わっていないと思います。
開園当初は社員達に理念教育をしても、ほとんどの社員の反応が「紀乃さんの言ってることって理想論だよね」「現場はそううまくはいかないよね」という反応だったんです。
それでも何人かは「紀乃さんが言ってる保育を実践できる!」と思ってくれて、当時は保育経験も浅く、正社員ではなかった職員でしたが、今は正社員となり、園長を任せています。
各園のリーダー職として活躍している園長たちは、各園の社員達に理念を伝えることも担当業務のひとつなので「自分の中では感覚的に掴んでいるけど、どう他のチームメンバーに浸透させていったらいいんだろう」ということは常に考えながら園の運営をしてきたと思います。
そんな風に最初は伝える立場に戸惑っていたけれど、私が送り続けたメールを見てもらったり、日々の中で学んでいったりして、脳内が変わっていくと日々発する言葉も変わっていったなということはすごく感じます。
10年かかりましたが、園長たちは今は感覚だけではなく言葉としても「ちいはぐっぽい」という会話ができていますね。
そんな風に「ちいはぐらしい」という共通言語が今も育っていっていますが、概念をなるべく短い言葉で表すってとても大事だなと私自身も学びましたし、「ちいはぐっぽいね」という会話をするのがとても好きです。
————「ちいはぐらしさ」を今後も追及されていくと思うのですが、概念的な部分ではなく、保育園にとっての成果というものは何にあたるのでしょうか?
保育園の成果の測定って難しいですよね。
「非認知脳力」を育むことが重要ですので、もう非認知=定量化できない、っていうことがはっきりといわれているので。
ただ、厚生労働省管轄の福祉事業はとおおきく、児童福祉・高齢者福祉・障碍者福祉という3つに分類されていて、保育園は、児童福祉施設として国が作成している保育所保育指針に沿って、保育を提供します。
例えば、卒園までに育みたい姿のなかに「健康な心と体」などがあり、これがひとつの成果の目安となります。
これも「到達すべき目標ではないことに留意」とされているので、私の解釈ではできるだけ近付けるように最善を尽くそうとなるのです。
なので、分かりやすい成果をなんとか言語化するとしたら「健康が維持され、その子の発達段階が充分に保障されて卒園を迎えること」になるのかもしれません。
これは簡単なようで、簡単ではないことです。
自分で自分の生命を維持する力が未発達な子ども達をお預かりしているので。
保育(子ども児童福祉)の場合は「発達保障」と言って、「心身共に本来の発達が保障されて卒園する」のように、最低限の部分を保障する、というのが成果にあたります。
それが職員たちからすると非常に見えづらい成果になるので、モチベーションキープがとても難しい。
周りからも、本人たちも、当たり前のことをしてるだけという風に感じてしまいがちなんです。
でも、毎日変わらずお世話をするということが、どれだけ尊いことか。
今日も園児たちが元気に通園してくれることに喜びを感じて欲しい、そう思っています。
そんな想いが反映されているのが、保育目標です。
1.自己肯定感の育み
2.自己効力感の育み
3.基本的信頼感の育み
という子どもに育んで欲しい3つの目標を掲げているのですが、お布団があること、屋根があること、今日顔を合わせて会えること、そんな日常を喜びましょう、という想いが込められています。
自己肯定感という言葉は今やあちこちで使われますが、ちいはぐが考える自己肯定感って何だろうと考えた時に、生きる喜びを感じることなのかなと。
そして園児たちがどうやったらその喜びを感じてくれるかなと深ぼった時に、「生きる力の基礎を養い、生きる喜びを感じる”食べること、遊ぶこと、眠ることを大切にしよう”」という言葉になりました。
何でも深掘りすることが好きなんです、私。
あとは定期的に保護者満足度アンケートを実施しなければいけないのですが、全体の平均満足度は大体70%くらいのところ、うちは前回97%だったんです!嬉しいですよね。
これも1つの成果なのかなと思います。
会社の歴史・事業について
————すごい...!ありがとうございます。事業を立ち上げようと思われたきっかけを改めてお伺いしてもよろしいでしょうか?
少し長くなりますが、私の幼少期の話からさせてください。
私は山梨の甲府で育ちました。
家の近くに保育園があったので、散歩しながらよくその保育園を見に行っていて、幼いながら何か惹かれるものがあったのか早くここに入りたい!と思ったんですよね。
だから親やおじいちゃん、おばあちゃんに、あの保育園に行きたい!ってずっと言ってたんですが、3歳クラスからは行かせてもいいと思ったみたいで、「3歳になったら行けるよ」と言われて。
でも子どもなのでそれが4月からという認識にはならず、誕生日の8月を迎えて3歳のお祝いをしてもらった次の日に自分で身の回りにあるもので支度をして、勝手に保育園に行っちゃったらしいんです(笑)。
それでもなんとか入園申請がとおり、私は8月に保育園に入園しました。
さらに、卒園するときに卒園アルバムの将来の夢に「小学校の先生になりたい」って書いたんです。
笑っちゃいますよね、まだ小学校にも行ってないのに(笑)。
でもその時からずっと教員になりたいという志は変わらず、大学生の時に早く教壇に立ちたかったので塾の講師のアルバイトをしました。
私の教科担当が、算数・数学・理科・社会だったのですが、先ほども申し上げた通り深掘りが好きなので、社会科って何だろうと深掘ったら、私の中では「社会性を身につけること」だという答えが出てきたんです。
そこで自分の担当学年だった中学校3年生のこの子たちに、社会性を身につけるためにはどんな授業をしたらいいんだろうと考えた末、将来的にあらゆる場面で必ず自己紹介が必要になるからその練習をさせようと、1人1人教壇に上がらせて自己紹介してもらうという授業をしました。
なんて良い授業をしたんだ、と私は大満足だったのですが、すぐに塾長に呼び出されました。
「なんてことをしてくれたんだ!」と(笑)。
塾というのは親御さんが高いお金を払って、テストの点数を上げたり受験に合格したりするために通わせてるのに、そんな授業をしたらクレームが来るだろうと怒られたんです。
当たり前ですよね、当時の私も確かにそうだなと思いました。
そこで、このまま学校の先生になっても、自分がやりたいことをやったら同じように校長先生に怒られるだろう、とハッとしたんです。
でも決められた枠の中でやりたいことを我慢してやるかって言ったら、それもつまらなそうだなと。
教師を目指してたのにどうしよう、と行き詰まって考えた末に、教師になって教育の現場で働くのでなく、教育のしくみに携わる仕事がしたい、と思うに至りました。
どうしたら、教育のしくみに携わる仕事ができるか全く分からなくて、調べているなか、とある会社さんのリクルートサイトに「システムエンジニアとはしくみをつくる仕事です」と書かれてているのをみて、「そうか!しくみをつくりたかったら、システムエンジニアになればよいのね!」と大学卒業後はシステムエンジニアに就職しました。
そこからシステムエンジニアしか採用しない会社に就職しました。
当時就職氷河期でしたが、システムエンジニアだけは大量採用していたので、同期は250人もいましたね。
入社後も社内でまた配属面接があって、教育関係のことをやりたかったので文科省の担当になりたかったのですが叶わず、結局国土交通省に配属されました。
子どものために働きたい、ということが自分の一番深い根っこの部分だったので、国土交通省が担当している道路や橋や川の整備など、全部子どもたちが使うものだから私は子どもたちの役に立っているはずだと自分に言い聞かせながら、6年間はSEとして働きました。
でも毎日パソコンと向き合っているだけなので、子どもが遠い!とある時痺れを切らしまして(笑)。
教育現場に行くのは違うという結論も出ていたのでどうしようと考えて考えた末に、子どもをたくましく育てられる場所、一番子どもと関われるのは保育園だ、という結論に至りまして、そこから会社を辞めて、保育士の資格を取りました。
その後自分に合った働きがいのある保育園を探したのですがなかなか見つからず、唯一素敵だと思えたのが東京からはかなり距離のある愛媛の保育園でした。
私は、目的達成思考なので、決めたことは何としてでもやりきりたいという思いで愛媛の会社の社長さんにお願いをして、愛媛の保育園で2週間、保育の実践を学ばせていただきました。
その後、社長さんの導きもあり、自分で保育園を創ることを決めました。
そこで駄目元で起業助成金を申し込んだ結果審査を通していただきまして、通ったからには会社を立ち上げなければならず、会社を立ち上げたからには起業をしなきゃならない、ということで保育園をつくるために融資を調達したり、30ほどの自治体にプレゼンをしに行ったり、いろんなことをしましたね。
ほとんど寝る間もないまま奮闘していたところ、調布市さんから「調布市の建物で保育をしてくれる事業者さんを募集します」といった公募があり、手を挙げて選んでいただいたといった経緯でちいはぐが生まれました。
調布市さんがきっかけを作ってくださったおかげで「ちいはぐ」が生まれたと感謝しています。
その他にも、自分の力だけではどうしようもないようなミラクルが色々と起きて「ちいはぐ」保育園が開園できたので、もしかしたら宇宙も応援してくれたのではないかと思えます。
————「ちいはぐらしさ」を今後も追及されていくと思うのですが、概念的な部分ではなく、保育園にとっての成果というものは何にあたるのでしょうか?
はい。私の中でビジョンは見えてるのですが、それを人に伝えるのが本当に難しかったです。
最初はメンバーから「わからない」って泣かれたこともありますね。
「何かしら理解できるものを見せてほしい」と言われて当時の私は一生懸命語っていたのですが、今の私が昔書いたものなどを読み直しても、何を言っているのか全然わからないんです(笑)。
今でこそ、少しはわかりやすい話ができるようになりましたが。
でもとりあえず何かしら喋ることはできたので、私の言葉を聞いて、当時のリーダーたちで「ちいはぐ保育の考え方」という冊子を作ってくれました。
同じ日本語なのに翻訳してもらったみたいな(笑)。
それが今でもうちのバイブルになっていて、定期的に研修などで見直したり、何かに迷った時に読み返したりすると答えが見えてくるみたいです。
なのでうちの宝物になっていますね。
作ってくれたリーダーたちには本当に感謝しています。
————紀乃様の中には常にビジョンがあるのですね。
そうなんです。とにかく現状に違和感を感じることがたくさんあるので、私の理想は何だろうって勝手に描いて妄想して、自分の中で答えが見えた時に「ああ素敵な世の中だな」って悦に入るみたいな。
おかしな人ですよね(笑)。
でも最初は、私の言葉に何を言っているんだろうって反応や空気が返ってくることばかりだったのですが、今はかなり共感してくれる人や受け入れてくれる人が増えました。
私の言葉で表すと、随分私みたいな宇宙人に優しい地球になってきたなと感じます(笑)。
それは地球が変化したのか、私自身が変化したのかわからないですが、昔から地球人ぽくないことをずっとコンプレックスに感じていたのを、「私は宇宙人なんだ」って認めて、自己認識を受け入れてから、私から見える世の中が変わりました。
変な話ですよね(笑)。
少し話が逸れましたが、自分のビジョンには妥協したくないとは思っています。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」と言いますが、私は「二兎追わなきゃ一兎も得られない」と思っています。
皆んなが良くなるようにしたい。
もちろん簡単にはできないことだけれど、それは諦めたくない。そんな想いやビジョンを持って、保育園を運営していますね。
従業員の皆様について
————素敵な志で感動しました。理想や理念に妥協しない紀乃様の元で働かれている従業員の方は、紀乃様の考え方にすごく共感されていらっしゃるんだろうなと思うのですが、実際にどんな方がいらっしゃるのですか?
採用基準としては、これまた定量化できない感覚的な表現なのですが、「ちいはぐらしい匂い」がするかどうかということろを大切にしています。
私が採用面接をすると、応募者さんのよいところやこれから伸びそうな所ばかり見てしまってほぼ全員採用してしまうこともあり、今は実際に一緒に働く社員達に面接をしてもらい、私は採用担当から外れて最終決定のみをすることにしました。
それでも「ちいはぐ」の保育に共感してくださる方が増えたのは、「ちいはぐ」の保育を感覚的に捉えることができている社員が増えた成果だと思っています。
その結果、一緒に仕事をするのは現場の職員で、困るのもまた現場の職員なので、そこは考えてリスクヘッジしないといけないなと。
元々私には「リスクヘッジ」という考え方はなかったのですが、今は私の行動一つが職員皆んなを巻き込んでしまうので...。
この10年で学んだことはリスクヘッジですね(笑)。
もちろん最終的には私が履歴書を見て、採用担当から話を聞いて決めるのですが、立ち上げのタイミングからずっといてくれているメンバーが今の採用担当なので、間違うことは少ないです。
フラットな目で見てくれますし、私の判断と大きくずれることはないですね。
あと私はずっと怖いもの知らずでガンガン進んじゃうタイプで、良い方しか見ない癖があって。
ポジティブとネガティブという言い方をすると私はポジティブ要素しか持っていないので、逆にネガティブな方に、これはどんなリスクがあるの?とか、どんなことが心配?など尋ねるようにしています。
なのでネガティブな人や、私とは全然違う人でも、チームとしてバランスが良いよね、と思えば採用して、育成ができるようにはしています。
得て不得手を補い合えて、かつビジョンに共感してくれる人たちが集まってくれていると思いますね。
————「ちいはぐらしい匂い」がするかどうかが採用基準とのことですが、それを何か言葉として表しているものはございますか?
理念ももちろんそうなのですが、採用面接の時にはこの3つに同意してもらえるかどうかは必ず確認しています。
①こどもの命、心、体の安全を守ります
②こどもと保護者のぴかぴかな笑顔を増やし、こどもの今と未来に拡がる幸せを大切にします
③学ぶことも楽しみ、自然な笑顔で働きます
①については大事な順番に置いていて、あえて見えづらい「心」を2番目に持ってきています。
②については、最初は「笑顔」だけだったのですが、どんな笑顔だろうと考えた時にメンバーが「ぴかぴかかな?」って言ってくれて決まりました。
③については、働くことや学ぶことを幸せだと思えたら自然な笑顔になると思うので、職員に対してはぴかぴかではなく「自然な」という言葉を使っています。
最低限、ここに賛同してもらえなかったら不採用にしていますね。
文章だけ見ると、言葉も短いですし一見簡単にできそうに思えるのですが、実際に保育に入ってみると難しいことも多いと思います。
この3つを実行できることが「ちいはぐらしさ」に繋がっているのかも知れませんね。
カイシャの育成論について
————なるほど。先ほど「育成」という言葉が出たのでお伺いしたいのですが、紀乃様が直接現場の職員の方へ理念浸透の部分以外で教育されることはあるのですか?
そうですね。
まず研修に関してはたくさん用意していますが、基本的には自由参加にしています。
私としては今まで何かを学ぶためにはその環境を自力で掴み取ってきた経験が大きいので、無料で学べる環境があるということはすごく恵まれていると思うのですが、主体性のない学びには意味がないと思いますので...。
自由参加にするともちろん差は出てしまうのですが、学んだ人は学んでない人に教えることで学習が深まるので、必ず知らない人には教えてね、という風に伝えています。
————厳しくも正しい教育だと思います。でもそんな紀乃様のポジティブさに救われている方も多いと思います。どうでしょう...。
でもそうかも知れないですね、無駄に明るいから(笑)。
ミラーニューロン効果という脳の仕組みもありますが、私と話すとちょっと気持ちが明るくなるというのは確かに言われます。
でも逆にネガティブな方に共感してあげられないので、わかってもらえない!と言われることもよくありますね。
ネガティブな言葉が出てきたら、「そうなんだ、でもこうしてこうすればいいよね」って解決策を提示しちゃうのですが、特に女性はそれを求めているわけじゃないときも多いじゃないですか。
なので元気になりたい時は私のところに来てもいいけど、「わかってほしい」と共感を求める時は私以外の方に話した方が良いと思うよ、私はポジティブな提案は得意だけど共感力は低いから、と言っています(笑)。
未来のビジョンについて
————面白いですね、素敵な取り組みだと思います!最後に改めて、今後のビジョンをお伺いしてもよろしいでしょうか。
はい。私たち大人世代がいて、次に子ども世代がいますよね。
一番最初にお伝えした通り子どものために活動をしていくというのが私の根本としてあるので、世の中をちょっとでも良くしてから子ども世代に渡したいというのが大きなビジョンです。
それはもう自己当社比じゃないですけど、最終的に私がちょっとでも良くしたと思うことができればそれで良いと思っていますし、逆にいくら周りに紀乃さん頑張ったんですねと言われても、私の自己評価にマルがつかないと駄目だと思っています。
児童福祉法上でも明示されているのですが、私が子どもだと思っているのは0歳から18歳です。
今は保育園の運営という形で直接サービス提供できているのは0歳から5歳なので、次は6歳から18歳までの子どもにどう関わっていこうかな、ということは具体的な事業として考えているところです。
形には拘らないので、学校でも良いですし、オンラインでの何かかも知れないですし、もしかしたらもっと違う形のものになるかも知れない。
また日本だけでなく海外にも目を向けているので、来月カンボジアに行く予定もあります。
今はまだ探り探りですが、子どもが笑顔に囲まれる世の中をつくっていきたいですね。
なので会社のロゴも、社名である子どもと笑顔=「チャイルド・スマイル」をモチーフにしています。
鼻に当たる真ん中の丸が子どもで、左目に当たるピンクの丸が、子どもにとって一番大きな存在の保護者で、右目に当たる丸がスタッフで、少し緊張感を持って寒色にしています。
みんなで抱きしめあって、笑顔になる地域を作りましょう、という想いを込めて作ったロゴです。
あとは笑顔あふれる地域にしていくためには、子どもと関わっているだけではなく、大人との関わりも必要だと感じ、数年前から、大人にアプローチする事業も始めました。
社会を少しでもよくしてから今の子ども達に引き継げるように日々邁進しています。